2013年5月アーカイブ

今回の対策で、担い手が特定されて集落のなかにーつや2つの担い手しかいないということになったとき、集落の環境や資源保全が維持できるとは到底思えない。

集落は地域住民全体のなかで維持されるのであって、担い手対策を徹底すれば徹底するほど、環境・資源保全対策を地域全体で担うこの対策の重要性は高まると考える。

環境保全は、農業生産が果たす自然循環機能を増進するという観点から、対象となる取り組みを極端に限定するというのでなく、多様かつ広範な取り組みに対する直接支払いの仕組みとして、また支援額についても、農薬や化学肥料の使用量の低減など、環境負荷の低減の取り組みにかかる追加コストを補填するものとして、今後取り組みを拡げていく必要がある。

アジアモンスーン下にあるアジアの水田農業も日本の水田農業もともに、集落で水の管理をしたり、国土の保全をしているという実態がある。

6つは、品目横断的政策と併せて車の両輪として新たに「農地・水・環境保全向上対策」が措置されたことは大いに評価される。

というのも、政策対象として絞り込んだ担い手だけでは地域農業を維持できないからである。

この対策により担い手以外の農業者や農業者以外の地域住民も含めて、農村の地域資源の保全や地域農業と農村の振興をはかることができると考える。

資源保全支援が全国的な広がりとなるよう、また地域間に格差を生ずることのないよう、厳しい地方財政を考えると大変心配であるが、特別交付税による地方財政措置も含めた万全の対応が必要である。

WTO農業交渉との関連である。

WTO交渉で上限関税が導入され、海外から輸入米が入ることになったり、MA米が拡大されると、国内の需給や価格に大きな影響を与える。

現状の収入変動の緩和という仕組みだけで担い手の経営を維持することはできないと考えられる。

WTO農業交渉ではこうした事態が生じないようにすることが求められるのである。

5つは、担い手づくりや交付金等の受取事務など、JAが大きな役割を担うことが想定されるが、システムの構築等事務負担が大きくなることも心配されるのである。

関係機関の担当者のワンフロァ化など国の一層の指導、支援強化が求められるところである。

品目横断の「経営所得安定対策等大綱」は平成17年10月に決定し、さらに平成18年7月には、その予算や水準を具体化する「実施要綱」が決定した。

それは、政策の対象を「担い手」に絞り込むというのであるから、まさに戦後農政の大転換である。

これまでは、規模の大小にかかわらず、農作業に従事し自分は農家だと認識し、作物の栽培があればそれを政策の対象にしていた。

もちろんこれまでも、農地の所有の移動は無理でもせめて利用を担い手に集積するべく様々な政策展開と努力がなされてきていたが、それでは十分すすまないということで、政策の対象を絞り込んで誘導するという最後のカードが切られたことになる。

7つは、食品の安全性を確保するために、両国において加工農産物や調整品等を含めた原産地表示の整備を徹底するとともに、EPAにおいても原産地規則の確実な実行を徹底していく必要があること。

そして、わが国の現行の食品安全性基準を厳格に運用するとともに、科学的根拠にもとつく衛生植物検疫措置(SPS)を堅持していく必要がある。

これらについては、輸入食品の食品衛生上の不適格事例が多発していることもあり、非関税障壁としてこれらの緩和を求める要求は、食品の安全性や人・動植物の健康に関わることであり絶対に認めることはできない。

また、わが国農産物の新品種や品種育成者の保護も絶対に欠かせない対策である。

4つは、それぞれの国の気候風土や地域特性の下で生産されている個別農産物のセンシティビティが尊重されるべきであり、品目ごとの事情を検証の上で例外措置が講じられること。

なお、この点は、現在締結されている世界のFTAでも農産物に多くの例外措置が講じられており、世界的にも十分認識されていることである。

5つは、多くの例外措置が講じられればいいが、相手国の要請もあって関税の引き下げや撤廃がすすむことも考えられ、その場合は、きちんと国内農業を守るという仕組みづくりや政策転換が行われ、絶対に影響を生じさせないことが前提条件になっていること。

税撤廃のみを中心とするのでなく、地域開発や産業基盤の整備など、政府間、農協間等の協力を基本にバランスのとれたものにしていく必要があること。

1つは、相手国との相互発展と繁栄を本来の目的とし、両国の経済的、社会的、文化的発展をめざし、様々な分野をパッケージとして総合的にすすめるものであること。

とりわけアジアとの関係では、これらの国々の貧困対策も含めて、両国農業者の生活や所得の向上につながるものであること。

2つは、わが国がすでに圧倒的な農産物の輸入国であるにもかかわらず、工業製品の輸出拡大の見返りに、農業に一方的なしわ寄せを求めるものであってはならず、各産業分野において公平な利益が享受されるものであること。

3つは、多様な農業の共存と農業の多面的機能の発揮を実現できるEPAにすべきであり、とりわけ、零細な家族農業を中心とするアジアの国々とのEPAについては、食料の安全保障や貧困の緩和、雇用の創出など農業の多面的機能が確保される必要があること。

結局、メキシコとのEPAは、野菜や果物等、約1100の農林水産品目についてメキシコの関税撤廃の要望に応えるとともに、わが国にとってセンシティブ品目である牛肉やオレンジや果汁等については輸入枠を拡大したが、最もセンシティブな品目である豚肉については、国内の豚肉価格の安定をはかるために設けられた差額関税制度の基本である分岐点価格を堅持し、制度の根幹にぎりぎり抵触しない範囲内での関税引き下げで合意することができた。

こうした、関税撤廃によるわが国からの工業製品の一層の輸出拡大の見返りに、相手国から農産物の輸入拡大をさらに迫られるという構図は、タイをはじめとする東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々との間でも同様である。

こうしたなかで、JAグループとしては、東南アジア諸国とのFTAも含めたEPAは、わが国の経済の状況、そして世界各国の動きをみるとき、一定のすすむべき方向であり、われわれとしても反対するものではないが、次の条件が満たされなければならないと一貫した主張をしている。

WTOにおける多国間交渉が前にすすまないことが明らかになって以降、2国間・地域間における自由貿易協定(FTA)交渉が大きなうねりとなって押し寄せてきた。

わが国は、シンガポールとの間で初めてFTAを含む経済連携協定(EPA)を結んだが、農業分野は、シンガポールが農業国でないということもあって現状を追認する内容であった。

農業分野も含めた本格的なEPAは、メキシコとの合意がはじめてであった。

しかし、農業分野におけるEPA・FTAの取り組みは、すでに圧倒的に農産物を海外からの輸入に依存し、逆に海外への輸出が皆無であるわが国の農業サイドにとっては容易なことではない。

メキシコとのEPA交渉においても、工業製品の関税撤廃の見返りに、豚肉等農産物のメキシコからの輸入拡大が迫られたのである。

これまで長い間、有機農業は特定の変わり者がやっているとの認識が広くあった。

しかし、国民の安全・安心の認識の高まりや、本来、自然を活かした循環型農業の展開をはかるためには、むしろ有機農業が大きな役割を果たしていることが明らかになってきた。

農地・水・環境保全向上対策で、生物多様性等を考えた環境保全型農業や有機農業の取り組みに対して直接支払いが講じられることとなった。

その水準はまだ小さいものであるが、内容の充実と、一層の取り組み推進をはかっていく必要がある。

また現在議論がすすめられている新しい有機農業推進立法の検討促進も課題である。

全国のJAの大半においてトレーサビリティの取り組みがすすんでいる。

平成18年5月に施行されたポジティブリスト制(改正食品衛生法)は、作目ごとに使用が限定された特定農薬と、その残留農薬の基準を厳しく設定したものであるが、安全・安心の確保のためには乗り越えてゆかねばならない。

結果として、中国の野菜等の輸入が相当抑制されているのは大きな副産物である。

これまでの中国からの輸入品の食品衛生法上の数々の不適格品の摘発状況からして当然の帰結である。

2つは、一定の国内生産があることによって、いざというときの国民の食料不足をいささかなりとも解消できることである。

平成5年のコメの大凶作のときに大きな混乱を避けられたのは一定の国内生産があったからである。

3つは、人間の健康に結びつく食の安全や安心が確保されることである。

海外では、中国の野菜の残留農薬の問題、ヨーロッパからの輸入飼料から発生したBSEの問題、そしてアメリカで発生したBSE牛肉の輸入禁止問題等、安全を脅かしかねない問題が発生している。

しかし、それでは食料のほとんどを海外に依存していいかというと、国民の多くも不安を感じている。

総理府の世論調査では、「可能な限り国内で自給するのが望ましい」と答えている人が80%以上にのぼっている。

食料の国内生産にこだわる理由として、1つは、農業生産というものが単に食料生産にとどまらない多面的な機能を有していることがある。

アジアモンスーンの雨の多い気候風土のなかで培われた水田農業は、雨を貯水して洪水を防ぎ、地下水を酒養し、緑は新鮮な空気を生み、美しい景観を維持している。

日本は小さな島国であり、1億2000万人もの食料を国内だけでまかなうことは到底困難で、完全に自給するのは不可能といっていい。

国内の農地を活用して、できる限りの需要に応える生産を行うにしても、不足する部分は海外の生産に依存せざるを得ないといえる。

食料を海外から輸入するためには外貨が必要であり、自由な貿易の体制が必要である。

そのためには国として、自由な貿易体制への協力や、外貨を確保するための工業製品の輸出により貿易立国を維持することが必要である。

そして何よりも自由な貿易体制を維持するには平和が欠かせない。

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